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COLUMN

東邦コラム

2025.06.05

その他

Harmonyに満ちた休日

Harmonyに満ちた休日

とある土曜日、近所のホールへ、珍しい楽器のコンサートへ歩いて出かけた。

出発してすぐ家の近くで目に留まったのが、ナミテントウとアジサイ の美しい世界。ナミテントウの属名は Harmonia で、アジサイの属名が至って即物的な Hydrangea(”水の容器”)であるのと対照的で面白い。


ギリシャ神話の調和の女神に由来するとされるこの虫の命名には、よく知られているように、厳然とした対称性をもつパターンに美を見出す傾向の強い古典的な西洋文化を感じる。ヨーロッパの伝統的な庭園や建築と同様、昆虫、いや動物の大多数が、(ほぼ)左右対称な形態をもつとされる中、この学名を授かるとは、天道虫のいかに幸運なことか。

 

アルプホルンの合奏は、もともと山岳地帯で合図を送り合う手段としてソロで吹かれていた楽器の音を重ねて音楽として発展させたもの。柔らかくのびのびとした音色が心地良い。古典的なharmonyの枠から飛び出す自由さも覗く。天道虫というよりは紫陽花、いやEdelweissの趣というべきか。ちなみに、ホール頭上にも花が咲いていた。

 

 

 

ホールから出るとすぐそこに見えてきた、なんだか気になるカフェ。

五感に届くすべてがharmonyの極みといえる作品に酔いしれた。

 


 

帰り道、江戸時代の町家である旧岡田家酒蔵を見学する。往時の暮らしと酒造と商いの様を生き生きと現代に伝えている。このエリアは市の中心部で、立ち並ぶマンション群と国指定重要文化財が接し、身を置くと時空を跨ったような不思議さを覚えるが、違和感というより、かなりharmonyを感じるのがまた不思議。

 



 

最後の一枚は、現在、旧岡田家とともに市立のミュージアムの構成建築物となっている旧石橋家。土曜日の体験に刺激されて、次の日に訪れた。

ミュージアム内の展示まで含め、数々の美しいもの、harmonyを感じさせるものたちとの出会いの週末となった。

 

そういえば、私たちの結婚内祝いとして選んだものが、木のコースターに “Harmony” と刻んだもの、だったことを思い出した。